第9章 野花咲く太陽の下
ペンダントトップから革紐を引き抜くと、指輪に通す。
ビアンカは即席のペンダントになった指輪を目の高さまで掲げて少しだけ笑み、リヴァイにそれを手渡した。
「ごめんね…。こんな物しかあげられなくて…」
リヴァイは手の平に乗る指輪を見つめた。
痩せてしまったビアンカの指には余るのだろうと、一目でわかる。
「ありがとな」
「ううん」
受け取った指輪を首から下げるリヴァイを見て、ビアンカは柔らかく笑った。
「大切にする」
ビアンカの笑顔につられ、リヴァイも笑みをこぼす。
「リヴァイの笑った顔、好きだな」
「何言ってんだ…」
「本当よ。笑顔が見られた日はね、嬉しくなっちゃうの」
あまり表情の変わらないリヴァイ。
出会った頃からそうだ。
それもあって、初めてリヴァイの笑顔を見た時、こんなに穏やかな顔もできるのかと驚いたものだ。
リヴァイの笑顔は、今も昔も何だか無防備で、あどけなくて。
「可愛い」などと言ったら不機嫌になってしまうかもしれないから、口にしたことはない。
けれども確かに、胸がトクンと鳴るのだ。
「春になったら…」
「え?」
「次の春、ビアンカの誕生日。プレゼント、楽しみにしてろよ」
「……うん」
その日を迎えられるかどうか、医師の見立てでは厳しい。
祈るように、願うように…
ビアンカに約束をした。