第8章 夢
「それ…、まさかビアンカに言ってねぇよな!?」
リヴァイは血相を変えて医師に詰め寄る。
「言えるわけないだろう…っ!!」
初めてそこで声を荒らげると、医師は悔しそうにリヴァイから顔を背けた。
「……」
いよいよこれが紛れもない現実なのだと、嫌でも思い知らされる。
つい半月ほど前までは、出会った頃からよく知るビアンカだった。
喜怒哀楽が豊かなわけではないが、落ち着いていて優しくて。
地下街にこぼれ射す陽の光のようにささやかで、そばにいるとほんのりと温かい。
そんな、春の木漏れ日のようなビアンカ。
ビアンカがいなくなる―――。
その事実は、リヴァイを闇の底に追い詰めた。
何故なんだ―――?
大切なものは次々と去ってしまう。
母さんも。
ケニーも。
今度こそ失いたくないと思っていた。
俺の手で必ず守り抜く。
今まで生きた中で、初めてそう誓った女。
ビアンカ―――。
心から愛した尊い存在。
俺のそばにいてくれよ……。
逝かないでくれ、ビアンカ……。