第8章 夢
「先生と話せるか?」
リヴァイが訪れたのは、ビアンカが診察を受けた診療所。
開口一番尋ねられたナースは、固い表情でリヴァイを見つめた。
リヴァイのことは、医師共々よく知っていた。
ケニーに拾われた直後、餓死寸前だったリヴァイの体を定期的に診察していたのがここの医師だったのだ。
「丁度患者さんが途切れた所よ。待ってて」
ナースは診察室へ入っていく。
程なくしてその扉が開き、医師が顔を出した。
「リヴァイか。入りなさい」
促されるまま診察室に入る。
気持ちが逸り、前のめりになるリヴァイ。
「ビアンカが病気ってどういうことだ?先生でも治せねぇのかよ?」
「ビアンカは体の免疫が徐々に低下していく病だ。残念だが、今の医学では治療法はない……」
「!?」
「これからどんどん体力は奪われていく。仕事はおろか、普通の生活も難しくなる」
受けいれがたいその事実。
声を失い、呆然とする。
そんなリヴァイに、更なる現実が突き付けられた。
「それから、もうひとつ…」
視線だけを向け、リヴァイは続く言葉を待つ。
「ビアンカの余命は……もって、一年……」
「………」
心がそれを拒否しているようだった。
幼い頃から知るこの医師を、疑ったことなどない。
けれども今は、その口から告げられる言葉の全てが信じられない。