第6章 二人
「ビアンカッ…!」
耳を掠めたのは、聞き慣れた少年の声。
「よかった……見つけた……」
酷く安堵したようなため息混じりの声が、耳元で響く。
「…リヴァ、イ……?」
息を呑むビアンカ。
振り払おうとしたその腕は、探し求めていたリヴァイのものだった。
やっと掴まえた、とでも言うようにしっかりと抱き締められている。
一気に体の力が抜け、恐怖心が解けていく。
振り返ってみれば、額に汗を滲ませたリヴァイがこちらを見つめていた。
きっと必死になって探してくれたのだ。
暗闇に浮かぶ瞳を見れば、それは明らかで…
「リヴァイッ…!」
体を捩り、目の前の温もりにギュッとしがみついた。
「ごめんね…っ…」
声を震わせるビアンカの背に、そっとリヴァイの手のひらが滑っていく。
何度も何度も、不安を和らげるように。
「帰ろう、ビアンカ」
改めて自己嫌悪に陥る。
こんなに心配をかけても、迷惑をかけても、何ひとつ責めたりはしない。
知らず知らずのうちに、いつもリヴァイの優しさに甘えている…。
情けなさで頭を上げられずにいると、温かな人肌に手の平を包まれた。
「もう暗いから。離れるなよ」
「うん……」
指を絡め、しっかりと繋がれた二つの手。
離れないように、離さないように、闇が降りた道を行く。
さっきまでは怖くて不安で堪らなかったのに、リヴァイがいてくれるだけでまるで違う。
彼の温もりは、冷えたビアンカの体も心も癒してくれた。