第6章 二人
往来から少し離れた市場の外れ。
その路地裏にビアンカはうずくまっていた。
リヴァイにどんな顔をして会えばいいのかわからない。
軽蔑しただろうか。
憐れんだだろうか。
汚れている、と思われたのではないだろうか…。
どれも当てはまる気がしてならない。
リヴァイのことだから、表面上はきっとこれからも変わらずにいてくれる。
けれど自分を見る目は確実に変わってしまっただろう。
そんな思考を経て、ふと気づく。
私はリヴァイの目に、どう映っていたかったというの…?
そうか…
汚いことなど知らない、"普通の女" として見ていて欲しかったんだ…。
「何て狡いんだろう……」
涙が頬を伝っていく。
膝をグッと抱え、顔を伏せた。
――――――………
どのくらい時を刻んだだろう。
辺りを見回せば、日は届かなくなってきている。
いつまでもここに隠れている訳にはいかない。
「戻らなきゃ…」
ポツリ呟いて立ち上がる。
しかし、来た道を戻るため足を踏み出しても、闇雲に走ってきたせいで方角がわからない。
同じような造りの民家や店が並び、先程通ったのかどうかも記憶にない。
「どうしよう…」
段々と人も目に付かなくなってきた。
取り合えず死角になるような道は避け、大きな通りを進む。
きっとリヴァイも探してくれている。
ケニーがいなくなってからは、以前にも増して自分のことを気に掛けてくれていた。
リヴァイを頼っていたことを改めて思い知る。
進む先が正しいのかもわからないが、ただ足早に歩く。
無事に家まで辿り着けるのか、不安を拭えない。
闇が落ちてくるのをまざまざと感じ、ふと足を止めた。
来た道を振り返る。
「こっちじゃない…?リヴァイ……どこにいるの…?」
このままでは暗闇に紛れてしまう。
過去に襲われた恐怖が蘇り、ビアンカは思わず少年の名を叫んだ。
「リヴァイ――ッ!!」
その時。
突如何者かの手がビアンカの肩を掴む。
ビクッと体が跳ねた次の瞬間には、後ろから力任せに腕を回され動きを封じられていた。
「……っ!?いやあぁぁあっ……!!」