第6章 二人
「ビアンカ…!」
リヴァイがビアンカを追おうと足を踏み出したところで、その腕を男が掴んだ。
品定めするように頭の上から爪先まで、ジロジロとリヴァイを眺めている。
「何だ、まだガキじゃねぇの。刺激が強い話して悪かったな。気をつけた方がいいぜ?今も体売ってるかもしんねぇよ?あいつ」
下世話な物言いの男に、リヴァイは舌打ちをして睨み上げた。
「忠告どうも。そういえば、ビアンカ言ってたぜ?初めての男がド下手で、演技するのもひと苦労だったってな」
「はぁ!?おいっ……」
男の手を力いっぱい振りほどき、その場を駆け出すリヴァイ。
ビアンカ…どこに行った?
俺は何も変わらない。
過去の男とか過去の生き方とか、そんなものどうでもいい。
今そばにいるビアンカが全てだ―――。
あれから直ぐに後を追った。
そう遠くへは行けないはずだし、何よりリヴァイの方が走るのは速い。
それなのに、何故だか見つからない。
人混みに紛れてしまったのか、それともどこかへ隠れてしまったのか。
晩秋の日没は早い。
ただでさえ薄暗い地下だというのに、日が落ちてしまっては光が閉ざされる。
また昔のように、ビアンカの身が脅かされるようなことにでもなったら……。
ビアンカを守るためにそばにいると決めたはずなのに、その姿すら見失ってしまった自分を罵倒したくなる。
ギリッと奥歯を食いしばり、もう一度辺りを見回して…
「ビアンカ―――っ…!」
リヴァイは無意識に、その名を叫んだ。