第6章 二人
聞かれた……リヴァイに………。
忘れたい過去。
体を売って金を稼いでいた昔の自分。
固く蓋をしていた記憶を、あの男はあっさりと蘇らせてしまった。
自分勝手な抱き方をする男だった。
ビアンカの初めての客、初めての男。
妙に気に入られてしまったビアンカは、その仕事を続ける間、何度も客としてあの男に体を赦した。
どうして今更、こんな思いをしなくてはならないのだろう?
惨めな暮らしからは抜け出せたはずなのに…。
酷く寒い。
ゾクゾクと体中が粟立つ。
あの男に会ったことで思い知らされる。
これから先も、客として相手をした全ての男に怯えながら暮らさなくてはならないのかと。
脇目も振らずひたすら走り、息も絶え絶えになった所で立ち止まった。
ゼイゼイと肩で息をする。
振り返ってみるが、そこにはビアンカただ一人。
男もリヴァイも追っては来ない。
安堵したビアンカは込み上げてくる涙を堪えながら、唇を噛み締めた。