第6章 二人
「ビアンカ。買い物かい?」
その途中声を掛けてきたのは、昔馴染みの年配の女。
さっぱりとした性格で、ビアンカの身の上を知っていても普通に接してくれる数少ない人間の一人。
「ええ。今日は荷物持ちがいるから、隣街の市場まで」
悪戯っぽく笑ってそう答えると、女は少し先に待つリヴァイに気づき笑みをこぼした。
「あんたたち仲いいねぇ。まだ一緒にならないのかい?」
「え…?」
あまりにも突拍子もない問いにビアンカは一瞬言葉をなくした。
その直後、慌てて手を振る。
「やだ、おばさんったら。リヴァイとはそんなんじゃないわよ!」
「あら。そうなのかい?あたしゃ、てっきり…。似合ってると思うけどねぇ…。寒いから風邪引かないようにね」
「ええ、おばさんも…」
去っていく女の後ろ姿を眺めながら、予期せぬ言葉を心の中で繰り返す。
自分たちが外からどう見えているかなんて、考えたこともなかった。
毎日家にやって来ては一緒に過ごしている男女二人。
冷静になってみれば、そう映っても至極当然。
リヴァイと、私が―――?
とぼとぼ歩きながらリヴァイの元へ辿り着けば、怪訝な表情をされる。
「顔赤い。どうした?」
「え?」
ビアンカの額に骨張った手が伸びる。
顔を覗き込んでくるリヴァイとの距離が、近い気がする。
「熱…?じゃねぇか…」
「…っ、何でもないよ。行こう」
ビアンカはリヴァイの視線から逃れるように、そそくさと先を進んだ。