第5章 去る者 ※
「お前、何か勘違いしてるようだけどよ…」
横たわるビアンカの髪を撫でながら、ケニーが口を切る。
「リヴァイは俺の子どもじゃねぇぞ」
「………え?」
突如告げられたその事実。
ビアンカは目を見開き、ただ真っ直ぐケニーを見つめた。
「リヴァイは妹の子どもだ」
「………妹…?」
「いつだったか話したろ。お前に似てるって女。それが、妹だ」
「………」
すぐには頭がついていかなかった。
リヴァイはケニーの子どもだと思い込んでいた。
そして、リヴァイの母親は、ケニーが愛したかもしれない女。
―――ずっとそんな風に思ってきたのだ。
突然の真実に戸惑う。
「…じゃあ、リヴァイは甥っ子ってこと?」
「ああ」
「どうして本当のこと言わないの?」
「俺と血の繋がりがあるなんて知っちゃあいけねぇんだよ」
「都の殺人鬼だから?」
「ちょっとばかし違うな…」
ひとつ小さくため息をつくケニー。
ビアンカを抱き直すと、真剣な声で続ける。
「俺の本当の名前は、ケニー・アッカーマン」
「 "アッカーマン" ?」
「アッカーマンってのは、王族に仕えながらも王が支配できない一族だったんだよ。そのせいで俺たちは迫害され、根絶やし寸前まで追い込まれた。その追い込んだ奴らを返り討ちにした結果出来上がったのが、"切り裂きケニー" だ」