第4章 誰がために
"ただの知り合い"の子どもを拾って育てるなんて奇特な真似、こんな薄汚い地下の世界で誰がするだろう。
俺はあんたの子どもなんだろう?
どうして母さんと離れたんだ?
どうしてビアンカと向き合おうとしない?
ビアンカの寂しそうな顔なんて、見たくねぇんだよ。
ケニーには、聞きたいことも言いたいことも山ほどある。
でももしも口にしてしまったら、ビアンカをもっと悲しませてしまう。
今更何も聞けない。
どうせなら、まだ子どもだったあの頃、聞いておけば良かった…。
ケニーはビアンカの家に着いただろうか。
安堵したビアンカの顔が目に浮かぶ。
姉がいたらこんな感じなのかもしれない
―――ずっとそんな風にビアンカを見ていた。
けれど今は、ビアンカに頼られることに喜びを感じる。
子ども扱いされると腹が立つ。
寂しそうな顔をしていれば、慰めたくなる。
誰がために生きているのか?
ビアンカを守るため――――。
あの夜、俺を思って泣いてくれたビアンカ。
母さん以外に泣かせたくないなんて思った女は―――
ビアンカが初めてだったんだ。