第4章 誰がために
「年なんて関係ねぇだろ…。ビアンカは女なんだから、危ないことは俺かケニーがやる」
「……うん」
驚いて言葉に詰まった。
リヴァイに女扱いされるなんて、思いもしなかったのだ。
更にリヴァイは、不機嫌そうに呟く。
「ケニーの奴、ビアンカに何させてんだ」
「違うよ。私がケニーを待たなかったからいけないの」
「……俺に言えば良かっただろ」
「え…?」
何かあった時、ビアンカが一番に頼るのはケニーだ。
それは以前からそうなのだが、いざそんな場面に出くわすと無性に気に食わない。
ケニーを見つめるビアンカが時折覗かせる寂しそうな顔だって、目を逸らしたくなる。
「俺は……もう大人だ」
ポツリそう言って、リヴァイはビアンカの部屋を後にした。
家へと帰る途中、遠目に見慣れた姿が映る。
背の高い影。
帽子にコート。
気だるそうな歩き方。
きっとビアンカは、この男を待っている。
「……遅かったじゃねぇか」
「何だよ、チビ?ご機嫌斜めか?」
「ビアンカが怪我した」
「…何?」
ケニーは顔色を変え眉間に皺を寄せると、らしくもなく早口でリヴァイに詰め寄る。
「怪我って、あいつは?家にいるのか!?」
「ああ、寝てる。捻挫だ。あんたに屋根の修理頼んだんだろ?当てにならねぇから自分でやろうとして、ハシゴから落ちたんだよ」
「!」
それを聞くや否や、小さく舌打ちをしてビアンカの家に向かって走って行く。
責める言葉をもうひと言でもぶつけてやろうと思ったものの、その隙すらなかった。
「そんなに大切なのに、何でそばに置かねぇんだよ…。ビアンカも…母さんも…」
小さく呟いたリヴァイは、唇を噛み締めた。