第4章 誰がために
「ケニーの奴、飯食ったら片付けろよ…」
テーブルの上に残されたままの食器にリヴァイは眉をひそめる。
綺麗好きは元々のもの。
汚い口調は、五年間ケニーのそばにいたことで影響されたもの。
渋い顔で食器を洗い場に移し、それを洗うため服の袖を捲った。
と、その時。
「きゃああぁ……っ!!」
女の高い悲鳴と、ドスンと地面を打つ鈍い音。
「ビアンカ?」
声の主に気づいたリヴァイが慌てて部屋の外へ出てみれば、そこには足を押さえたビアンカがうずくまっていた。
屋根に向かってハシゴが立て掛けられているのを見て、状況はすぐにわかる。
「落ちたのか!?」
「足を滑らせただけよ…。大したこと…、痛っ…!」
起き上がろうとして右手を着いた途端、ビアンカの顔が苦痛に歪んだ。
リヴァイは直ぐ様その体を抱き上げる。
「ちょっ…リヴァイ!?」
「医者に診せに行こう」
「大丈夫よ…」
「折れてたらどうすんだ?酷くなってからじゃ遅いだろ」
「……」
真剣な顔でそんなことを言われれば、返す言葉もない。
されるがまま、ビアンカは大人しくリヴァイに身を委ねた。
胸がいっぱいになる。
大人の体を軽々抱き上げてしまえる程に成長したリヴァイ。
身長だって、いつの間にか自分よりも大きくなってしまった。
抱きかかえられた体勢のままふと見上げたリヴァイは、いつもより数段凛々しく映った。
「良かったな、ただの捻挫で」
「うん。ありがとう、リヴァイ。ごはんも作ってくれて」
結局骨には異常なさそうだということで、二人は帰ってきた。
リヴァイはビアンカに食事を作り食べさせた後、無理矢理ベッドへ休ませる。
「何か情けないわね。助けてもらってばっかりで」
「情けない?」
「うん。だって私、リヴァイより年上なのに」
恥ずかしそうにそんなことを言うビアンカ。
リヴァイの瞳に影が落ちる。