第4章 誰がために
月日は風のように流れた。
リヴァイがビアンカを守るために手を汚した夜から、三年。
出会った頃の痩せこけた姿はまるでない。
小柄なのには変わりはないが、骨格はしっかりして声も少し低くなり、顔つきも大人びてきた。
「ねえリヴァイ、水持って行ってくれる?」
「ああ」
水汲み場でビアンカが呼び掛ける。
女の腕で持つには少々気合いがいる、桶いっぱいに張られた水。
リヴァイはそれを軽々一つずつ両手に持ち、家の中へと入っていく。
これだけではない。
薪割りだったり、買い出しだったり。
この前はビアンカの仕事場である古書店で、大量の本の整理にも付き合ってくれた。
本当に頼りになる。
いつの間にか、リヴァイは子どもではなくなっていた。
「何か最近、リヴァイに頼ってばっかり」
「いいこった。女に頼られてこそ一人前だ」
「力仕事はできるし、家事も上手だし。ケニーよりも断然頼れるわ」
「まあ、お前を気持ち良くさせることだけは無理だろうがな。って、痛ぇっ…!」
肩に乗せられた無骨な手を、ビアンカは指でつねる。
「バカなこと言ってないで、ケニーは屋根の修理。そろそろ隙間風が寒いのよ」
「へいへい、後でな。ちょっくら用事済ませてくるわ」
「え?戻って来るんでしょうね?」
疑いの眼差しを向けるビアンカを背にして、ケニーは去っていく。
「もう…」
この家の古びた屋根は、これから訪れる冬の寒さを凌ぐには厳し過ぎる。
当てにならないケニーを待つのを止め、ハシゴを持ち出すビアンカ。
釘に金槌、木板を抱え、そそくさとハシゴに足を掛けた。