第2章 過去 ※
しゃくり上げるビアンカの耳にリヴァイの声が届く。
それは淡々とした、いつものリヴァイの声。
ビアンカはただ泣き続け、リヴァイはその背中に手を添える。
あの男を殺めたことに後悔はなかった。
自分の手を汚すことでビアンカを守ることができたなら、それで構わないとさえ思えた。
力が欲しかったのは、最初は自分の身を守れるようになりたかったから。
けれど今は、ビアンカを守るためにこそ力がなくてはと思う。
ビアンカが泣く所を見たのは、これが最初で最後だった。
その夜は小さなベッドで二人で寄り添った。
ビアンカもリヴァイも、一人で眠るには堪える夜だった。
二人分の体温でベッドの中は温かい。
ただ黙って微睡みを待っていたが、それは一向にやって来ない。
ふと気づいた時、隣に横たわるリヴァイは規則正しく呼吸していた。
瞳を閉じた無防備な顔は、歳より幼く見える。
静かで暗い室内。
嫌でも思い返される、今夜の出来事。
血の滴るナイフを握った、あの姿。
自分を助けてくれた二人。
あの日のケニーと今日のリヴァイは、とてもよく似ていた。
それは、血の繋がりを感じずにはいられない程に―――。