第2章 過去 ※
「………はぁ、はぁ……っ……ケニー…?」
「ビアンカ……!」
想像よりはるかに小さな影、そして高い声。
「……!?」
ビアンカのそばに屈み込んで血相を変えているのは、リヴァイだった。
ナイフを逆手に握ったその手は、小刻みに震えている。
男の姿を確めてみれば、黙って血溜りの上に倒れ込んでいる。
さっきまでビアンカの首を絞めていた力強さなど微塵もない。
事切れて、ただそこに伏せていた。
「……リヴァイが……殺ったの?」
リヴァイは無言のまま。
未だ立てずにいるビアンカの体を起こすと、そっと手を差し出した。
ビアンカは、ゆっくりとそれに手を伸ばす。
震えていた。
差し伸べるリヴァイの手も、ビアンカの手も。