第2章 痛がりな僕らと声なき恋(天童覚)
その日、天童覚は心底驚いた。
二週間ぶりのオフの日の、穏やかな午後のことだ。大好きな漫画の実写化映画を鑑賞してご機嫌の彼は、駅前通りをのらりくらり。
気の赴くままにお散歩をしている最中だった。あまりにも突然にやってきた、出会いの瞬間。
「……わお、刺激的ィ」
きろりと見開かれた大きな目が、ひとりの女性をまじまじと見ていた。
大きな郵便局の向かいにある、大きな高層マンション。その両者に挟まれた緑豊かな公園に、彼女は倒れていた。
いや、正確にいうと寝転んでいた。
もっといえば、眠りこけていた。
着崩れたオートクチュールのスーツもそのままに、色褪せたベンチの周りには、大量のワインボトルを転がして。
そのどれもが一滴残らず飲み干されていたものだから、天童覚は心底驚いたのである。