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第10章 丘を越えて行こうよ



小さな一也と小さな詩音が、手を繋いで丘を越えて行く。
忙しなく辿々しい足取りで、でも軽やかに、小さなふたりがおいでおいでと笑顔を見せる。

「ねえ!」

「うわ…あ…、ちょ、ちょっと詩音ちゃん?」

いきなり詩音に頬を両手で挟まれて、一也が体を竦める。詩音は一也の目をじっと覗き込んだ。

「アタシ、アンタに何処に連れてって欲しいか、もう言ったっけ?言ってないよね?」

「き…聞いてないよ。何処に行きたいの?」

一也の赤い顔を見ていたらいやにくすぐったい気持ちになって、ピアノ教室のあるペンキ屋ってのはどんなもんだろうなんて思いついて、詩音はふっと笑った。

もしかして悪くないんじゃない?
まぁね。まだ全然わかんないけどね。でも、悪くないかもよ。

三望苑の見晴台に行ったら、一也とそんな話をしてみようかな。

ねえ、どう思う?小さい一也に小さい詩音?

丘の向こうのアタシと一也、どんな感じだろう。楽しみじゃない?

ね。














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