第1章 バルバッド編
「シン!貴方って人は!また勝手に女性を…って、その姿は…まさかアンジュですか?!」
「あ!お母さん!」
「誰がお母さんですか!!」
「えっ!ジャーファルお兄さんって女の人だったの?」
「違います!!」
出てきた瞬間ツッコミの嵐に、流石だなと感嘆の声を漏らすアンジュ。そんなアンジュの姿をアラジンはじっと見つめていた。
「お姉さんの周りのルフ…不思議だね」
「やっぱりわかっちゃう?流石マギ」
「マギのこと知ってるのかい?!」
「よーく知ってるぞ?アラジン自身の事もね」
「本当かい!?」
キラキラと目を輝かせてアンジュを見るアラジン。やはりショタは素晴らしいなと心の中でアンジュがガッツポーズを取っていることは、誰も知らない。表上はただの笑顔の優しいお姉さんだ。
「実は私、ウーゴ君と知り合いなんだよ」
「ウーゴ君と!?」
「だからキミが何者なのかも、4人目のマギについても、その使命も…全部知ってるよ」
しん…と周りが静かになったのは気のせいだろうか。全ての視線がアンジュの方を向いている。
「じゃ、じゃあ教えてくれないかい?僕は何者で、使命があるとすれば、それが何なのか…!」
アラジンの周りのルフがざわつく。興奮と期待に満ちたルフは探究心の塊で、今か今かと待ちわびている様子だ。
答えてあげたいのは山々だが、できれば周りに口外したくない内容だ。それに、本来この事についてはアンジュから告げるべきではない。これはアラジン自らで見つけなければならないのだ。
「そうだな…全部は教えられないよ。キミ自身で見つけないとダメなんだ。ウーゴ君もそれを望んでる」
「でも…っ」
「でも何一つ教えないってわけでもないよ。キミが困った時、悩んだ時に、どうしてもわからないときにヒントをあげる」
まだ何処か納得がいかないようだが、それでもアンジュの顔を見てアラジンはありがとうと笑った。
「勿体ぶらなくても教えてあげたら良いんじゃないか?」
「そうだな、シンドバッドがいないところでなら喋ってあげてたかな?」
「…相変わらず俺に厳しいな、アンジュは」
はははっ!と笑うシンドバッドをアンジュは温かくない目で見つめた。