第1章 バルバッド編
「ま、そんな具合に俺は自分で自分の頭で考え、正しいと思える答えを出した。君達も何が良いのか精一杯自分で考え、そうして導き出した答えを信じて行動して欲しい。俺はそうやって道を切り開いてきたが、君たちはどうだろうか」
悩んで苦しんで、考え出した答えを信じて自ら歩んだ時、人は強くなれるのだ。
言いたかった事を全てシンドバッドに言われたアンジュは、彼の姿に過去を思い出した。
「あんなに小さかった男が大きくなったもんだな…」
「ん?惚れてもいいんだぞ?」
「シンドリアには住まんからな」
「はっはっはっはっ!」
冒険一筋だったあの頃の、真っ白なシンドバッドを思い出しては懐かしみながら、アンジュは彼らと共に作戦実行のその時までホテルで過ごした。
・・・・・・
「というか、本当にさり気なく盗賊退治に加えられててビビった」
「僕はお姉さんと一緒で嬉しかったけどね」
ここはアラジンとモルジアナが泊まるホテルの1室。アンジュの宿がまだ決まって無いと知った途端にシンドバッドが高級ホテルに泊まれば良いと提案したのだ。
当初はシンドバッド本人の申し出でシンドバッドと同じ部屋になりそうだったのだが、マギとしてのアラジンを見守る使命で地上に来たと話せば、ジャーファルの説得と共にシンドバッドは渋々食い下がった。その後も何度かアンジュを誘うシンドバッドの様子が見れたが、全てジャーファルに滅殺されて終わっていた。
そして現在、アンジュはアラジン達と同室で寝泊りする事になった。
「そういえば自己紹介がまだだったね!僕はアラジン!お姉さんの言った通り、マギだよ」
「私はモルジアナです…」
「ふふっ、二人とも可愛いなぁ…私の名前はアンジュ。これでも一応天使をやってるんだ」
アンジュの天使という発言にアラジンは驚き、モルジアナは首を傾げる。
「アンジュお姉さんが天使!?本当に?!」
「ああ、もちろん」
アラジンがあんまりにも目を輝かせて聞いてくるからか、アンジュはクスクスと面白そうに笑った後に、自然な動作で翼を出して見せた。