第4章 極
山姥切の呟きに、皆こちらを振り返った。
私は、手紙を抱えたまま膝をつく。
「あ、主!?どうなさいました!」
そんな私を心配して、入り口に一番近かった蜻蛉切が立ち上がった。
私は、私は笑って呟く。
「嫉妬なんだ」
「嫉妬………?」
山姥切が繰り返す。
私は顔もあげずに続けた。
「嫉妬してるんだよ。嫌なんだ、政府が君達を傷つけるのも。君達の心に政府が残るのも。」
私は立ち上がる。何時ものすました顔で。
「それをね、言うのが嫌だったんだ。ずぅっと、自分が大人のつもりだったから」
不老不死となって、自分に終わりが来ないと悟った時、心だけが置いていかれる気がした。だから、歳に合わせて大人になろうとしたのだ。
でも、それこそが子供だったのだ。
「おかしいだろう。でも、笑わないで聞いてほしいんだ。心の内をね、言うのがわからなかった」
喋らなくても、自分は察せたから。
「大人になるのは難しいね。でも、それなら子供でもいいのかもしれない」
私は手紙を使って口元を隠した。
「お願いがあるんだ。聞いてくれるかい」
私が尋ねると、皆頷いてくれた。
頷きかたもタイミングもばらばらで、私はそれに笑いながら、愛しいと思いながら、頼む。
「一緒に、駒になってくれ。私が死ぬその日まで共に」
端から聞くと、なんて台詞だと思われるだろう。
それでも、いいんだ。
私のわがままに、どうか付き合ってくれ。
「平野からの手紙が来たんだね」
私は、近侍である膝丸から手紙を受け取った。
それを読んで、私は胸のうちにゆっくりと広がっていくものを感じた。
「主、手紙にはなんと書いてあったんだ?随分と嬉しそうだが」
「明日、帰ると。」
「明日?早いな。」
「あぁ、早いね。どうやら、私が泣いているのがバレてしまったらしい。」
「泣いていたのか!?」
膝丸が正座から身を乗り出して聞いてくる。
「さぁ、どうだろうね」
私にも解らない。そう返して、私は微笑んだ。
この返答では膝丸の安心は得られないと解ってはいたけれど、まぁ、いいだろう。たまには、こんなこともいいもんだ。
「何時か、教えてあげる」
膝丸の頭を撫でて、私は手紙に目をおとした。