第4章 極
人に潰された存在を、山のように見てきた。
潰し潰され、愛し愛され。もはや水脈の様に広がったそれを、私達は防ぐために奔走するだけだ。
彼等だって、人の怖さを知らない訳ではない。訳ではないが、それでも、知ってほしくない怖さがあった。
政府に、彼等をこれ以上浸食してほしくなかった。
「私はただ、妬いていただけか」
呟いて、しっくり来た。成る程、嫉妬か。
政府に彼等を傷つけてほしくなかった。彼等の心に、政府が残ってほしくなかった。
なーにが自由だ。妬いてるだけの餓鬼め。
私はやけくそになって、寝転がった。
適当に羽織を手繰り寄せて体に掛ける。
そして私は何を考えることもやめて目を閉じた。
問題など、どうせ政府からの連絡がなければ取り組む意味がない。寝たって構いやしない。
(あー、謝らないと)
座敷を出るときの、彼等の顔がはなれない。
知らなくてもいい。その理由は、きっと伝わっていないだろう。
(嫉妬が理由、なんて言うと馬鹿だと思われるかな。)
目が覚めた時、視界に広がる景色が真っ暗で私は驚いた。
「!………いや、夜か」
障子を開いて、星空と満月を確認する。
真珠のような月に、思わず夜の美しさを再確認する。
「……………名月を取ってくれろと泣く子かな」
確かに、欲しくなってしまう様な月だ。
私は、その場に座り込む。
あー、と額に触れて、俯いた。
「!」
私は、口を開いた。
そのまま何事か続けようとしてその封筒を手に取る。
正確には、封筒の束を。
平野からの手紙が一番上に置いてあって、その下に他の手紙が重ねてあった。
差出人を確認して、それが本丸中の刀剣達である事を私は知った。
数名で一通を書いたもの。一人一通を書いたもの。様々ではあるが、どの文字も何処か寂しく見えた。
中を見て、私は思わず方を震わせる。
笑っているんじゃない。
『主、駒になるのなら俺もどうか一緒に』これは、とある源氏の宝刀の一文だ。
(本当に、優しい子達だ)
沢山の手紙。それらは、面白いほどに同じことを言うのであった。
平野の手紙を見る。
彼もまた、涙を流したのだろう。懐かしい景色、別れの瞬間。思い出に浸る彼を、側で見れないのは悲しいけれど、私には今、やらねばならないことがあった。
立ち上がり、座敷に向かう。
最低限誰かしらはいると思っていたのだが、座敷には皆が揃っていた。
「っ主」
山姥切の言葉が響いた。