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【刀剣乱舞】檜扇の伝記

第1章 疑問と、それに向き合う覚悟を持って


私達は、現在困っている。
私は、現在嫌悪している。
審神者は、身勝手な奴のオンパレードであった。
自己中、利己的、我が儘、独りよがり、独善的。それがどんな奴かと言えば、刀剣の誰かと恋に落ちてその愛に溺れるやつだ。
恋に落ちるのが悪いんじゃない。
誰かを愛することが悪いんじゃない。
だが、審神者にそれは不必要だ。
審神者とは、刀剣の上に立ち、彼等を導く存在。
そうとされる存在である彼等が、誰か一人に心をあけわたす事などあってはならない。
恋に落ちたって、他の者にも愛を持たなくちゃいけない。
世界はその愛する者との物だけじゃないのだから。

恋に落ちて、帰ってこなくなった審神者が沢山いる。
だが、思えばそんな場所まで人を落とした罪は、私達にもある。

「恋に落ちてもらっては困るのなら、最初から刀剣に心なんて与えなければ良かったのだ。」
無駄に肥えた男が言う。
私は、奴の顔を見て笑ってやった。
「心のない生物に、誰かを救う戦いが出来ると思っているんですか?貴方みたいなのが戦場に出たら、戦車に乗っていても死ぬてもしょうね。死因は、部下による刺殺、とかでしょうか。」
「っな!」
男が言葉を失う。

「恋に落ちた者を調査する為に、調査員をもっと増やそうか?」
ある時、背が高いだけで気の弱い男が言った。
私は、彼の肩を背伸びして叩き、言う。
「無駄だよ。一人二人を取り締まってどうにかなるものじゃない。それに、そんな不自由を強いたら今度こそ本当に就職希望者が居なくなっちまう。基本的に、私達は彼等に色んなものを強いてるわけだからね。」
「やっぱり、だめか………」
男は肩をすくめた。

「ならばどうする。いい加減、この問題に気が滅入りそうだ。」
ベヒースモーカーの上司が、煙草を吸うことすら止めて頭を抱えた。
私は、冗談混じりに言う。
「私が暇な審神者様ならこの問題を一生かけて解明するんですけどね」
「…………………………………ほう」
上司は一言もらし、黙りこんだ。

以上の場面を踏まえた上で、最初の命令に戻る。
私は、顔をしかめながら、しかしそれを受けることを決意した。
私に与えられた一つの問題。審神者の恋愛溺れ問題をどうやって解消するか。
言い換えれば、こういうことだ。

『審神者とはどうあるべきなのか』

審神者が………否、私達はどうあるべきなのか。どんな愛を、持つべきなのか。
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