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【刀剣乱舞】檜扇の伝記

第1章 疑問と、それに向き合う覚悟を持って


初期刀、というものを見るのもこれで何百回目の事になるか。
私は、五つの刀の中から写しとされる刀を選んだ。
名は、山姥切国広。審神者との恋に落ちる刀ランキング(非公式)ベスト10に入る何だかんだで初期刀一位の天敵とも言える相手だ。
加州清光と良い勝負をしていたのだが、結局彼の方が多かった。
だから、敢えて選ぶことにする。これも一つの実験だ。
具現化した彼を見て一言。
私は、笑って言う。
「私の名前は檜扇(ひおうぎ)。宜しく、国広君。」
「………山姥切国広だ。あんたが、俺の新しい主か。」
「そうだね。そうなる」
「………あんたも、俺が写しという事が気になるか」
「そりゃそうだ。それも君という存在の一部だからね。『写しなんかじゃない。貴方は私の一番よ』なんて台詞。私が言うには間抜けすぎる。」
「……………………なら、何故俺を選んだ。」
「解らないかな。写しでも良いと言っているんだ。君の価値は写しであることにのみあるんじゃない。」
私は彼にかける言葉を考えるまでもなく、言った。
「私は君の主だ。君の全てを愛し、信頼する存在だ。私に卑屈も謙遜もしなくていい。私は君を知った上で、君を選んだ。それだけだよ」
「…………………………………」
その時、彼は沈黙した。
私は、その沈黙に何を思っただろう。覚えていない。
「さぁ、行こう。君と私には大切な使命が二つある。」
「使命?」
「命を使ってまで成し遂げることさ。一つは、歴史修正主義者を滅ぼすこと」

「二つ目はーーー私達のあり方を考えること。」

その時の彼の顔といったら。本当に、今思い出しても愛しさが込み上げてくる。
あの時、彼のあの顔を見て、私は案外大丈夫かもしれないと思った。
彼を恋に落ちるのでなく愛すること。
可能だ。可能であり、そこに至上の幸福を見いだすことも出来た。
愛しているよ。私の愛を全て渡しても大丈夫な位。
そう言うと君は照れてしまうが、それでも今じゃあこう返してくれるね。
「皆、そう思っている。もちろん、俺も」
最初に会った時よりも大人びた、柔らかい顔で、私の好きな顔で、君は微笑む。
この愛に、至上の喜びを乗せて。
序章を、これにて締める。
私達は、この日より考え続けた。
愛というものを。心というものを。
その時間は幸福であったと、ここに記す。
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