第4章 極
勇気も愛も毎日もらっている。
言ってみて、覚悟は改めて決まった。
私は屋敷を出て携帯を手に取る。
今や、古くなってしまった通信危機。それを操作し、因縁の番号に電話を掛ける。
「……………………………………あぁ、言わなくても解るだろう。例の問題。解決する、私が」
私の言葉に、電話の向こうにいた相手は少なからず、衝撃を受けたようだ。
『どうして急に?』そのようなことを相手は聞いた。
「決まっているだろう。大切な者の為だよ。それ以外に、何が人の心を動かすものか」
相手の、酷くマニュアル的な返答が返ってくる。
私もまた、適当に答えて電話を切った。
「暫くは、また忙しくなるな」
こんな瞬間に、生きていると思ってしまうので自分という人間は異常だ。
ぐらぐらと視界が揺れて暫くまともに動いていなかった頭が回っていく。
歴史修正主義者との初接触、刀剣男士の発見、審神者の適正条件、数々の実験と経験に成功してきた私ではあるが、そんなものは過去の産物に過ぎない。
必ず上手くいくなんて事は、この世界に何一つとしてない。失敗は、死は、終わりは、誰にとて訪れる。
私は、可能性を見つけるだけに過ぎない存在だ。可能性をより確かにするだけの存在だ。
それに、何の不満があるものか。
「一期、少し時間いいかい?」
夕食後、私は一期を我が執務室に呼んだ。
真面目な一期は、私の前で百面相をしている。
何かいけないことをしたのだろうか、そんな精一杯の動揺に私は言葉を送る。
「実はね、平野から手紙が届いたんだ。」
「平野から?成る程。そういうことでしたか」
苦笑いで、彼はホッとしたように息をはいた。
「説教が始まるとでも思ったかい?」
「はい。私は、貴方に至るだけの思考を持ち合わせておりませんから」
彼のそれが、自嘲ではないことを私は知っている。
彼のこれは本音だ。
本気で、心のそこから私を、私という存在を敬い敵わないと思っている。だからこそ、彼の言葉には意味がある。
「君がそう思って、それを伝えてくれたこと。嬉しいよ」
「はい」
「もし、私が君が思うような人であり、今日もまたそうあれるのなら。それは、君のおかげでもある。それだけは、忘れずにいてくれ。」
「………っはい」
一期は嬉しそうに微笑んだ。
私はひとつ息をはいて、手紙を取り出す。
「見たまえ。ふふふ、本当に可愛い子だ。………そして、強い子だ。」