第4章 極
私は断言する。確信をもって言える事だから、迷う必要もない。
「そしてそれは、誰がなんと言おうが素敵なことだと私は思う。守れる何かを、守っていこう。」
私が頷くと、江雪も少しだけ頷いてくれた。
「だけど、無理はしないで。もし、辛いときが来たのなら、私に言いなさい。出陣も何も、大切だけれど君以上に愛しいものではないから。」
私の言葉に、江雪は少なからず驚いたようだが、けれど笑って。彼も答えてくれた。
話が一段落したのを見て、宗三が喋り始める。
「考え不足とは言いましたが、貴方ほど考え事の多い人もいないでしょう。」
「そうかい?私は案外ぼんやりしているのだけれどね」
「………政府から、また”手伝い”を要求されたのでしょう?」
「全く。君はどこからその情報を仕入れてくるんだ。まぁ、嘘をつく必要はないからyesと答えるけれどね」
私は苦笑いとも薄笑いともとれる顔で、宗三を見る。
「また、頼まれたんだね。前に喧嘩していたのに」
小夜の穏やかな声は心を落ち着かせるが、発言でひやひやとさせられる。
「喧嘩という程でもないよ。少し嫌味を言った程度さ」
「嫌味を言うくらいなら、そんな仕事断ればいいんです。どうせ、あの人達には天才とやらが居るんですから」
宗三は口元を袈裟で隠しながら、何処か怒ったように言った。
江雪が口を開くが、それを静止して私は宗三に首を振って答える。
「そうはいかないよ。私達の仕事はこの世界を守ることだ。私に出来ることなら、全力で取り組む。これも大切なことだよ」
私が言うと、宗三は完全に機嫌を損ねた様で。
「貴方はいいように利用されているだけなんですよ………」
そう言ったきり口を閉ざしてしまう。私が話しかけても、江雪が注意してもそっぽを向いたままだった。
宗三が、あぁ言ってくれた理由はわかっている。
私は仕方ないと、立ち上がった。
「時間だ。私はそろそろ戻るよ。江雪、お大事に。小夜、台所に柿があるから好きなときに三人で食べなさい。宗三………」
私は宗三の名を呼んだ。
「宗三、ありがとう。私は陰険だからね。利用されるだけじゃあ終わらないようにしているよ。傷つくことなんて無いさ。」
私が言い終えると同時に宗三が振り返る。
その綺麗な髪を少しすくようにしてから、私は襖に向かった。
「それに、君達も居ることだしね。勇気も愛も、毎日貰っているよ」
私は襖を開けた。