第4章 極
「取り乱してしまい、すみませんでした。」
長谷部がグズッと鼻をすするので、私はポケットティッシュを取り出す。
「使いなさい。折角の二枚目が台無しだ」
「………ありがとうございます。後日、三倍のティッシュをお返しします」
「………………解った、時にはしっかり断ろう。いらないよ、長谷部」
首を緩く振って私は彼の申し出を断った。
「取り敢えず、話を戻そうか。」
「はい。主、その極とやら、この長谷部が一番に行きますよ」
「君のめげない根性と自信とチャレンジ精神は大好きだけれど、残念ながら現在極になれるのは短刀の四名だけなんだ」
長谷部に説明しつつ、私自身もその理屈を考える。
(どうして、短刀四名だけなんだろうか)
久々に好奇心が疼くけれども、それを無視して私は続けた。
「しかも、極になるには贈物の道具が必要。今から取りに行くけれど、それは一つしかない。四人全員を極にするにはまた暫く時が必要だろうね」
「そうなのですか。因みに、その短刀四名とは?」
「平野、厚、乱、それから五虎退の四人だね。」
「成る程………」
(一期が騒ぎそうだな)
「ん?どうかしたのかい。長谷部」
急に黙った長谷部に私は聞いてみる。
「いえ………何でもありません」
「そうか。でも、何をもってして極になるのだろうね。本人達は、今朝も変わらない様子だったけれど」
「そうですね……………帰ったら話してみるのはどうでしょうか。もしかすると、話を聞けば自ら動きだすやも」
長谷部の言葉は最もであった。
元々そうしようとは思っていたので、私は頷く。
「そうだね。そうしようか」
贈物の中身は「手紙一式」「旅装束」「旅道具」のサンセット。
「ふむ、この様子だともしかしなくとも旅に出させるつもりなのかね」
私は考える。
(ますます、一期が騒ぎそうだな………)
「一先ず持って帰ろうか」
「お持ちしますよ、主」
「ありがとう」
歩き出した我々は、本丸へと向かう道で贈物を見ていた。
「手紙一式を渡したら、手紙を書いてくれるのかな。」
「主は、手紙が好きなのですか?」
「うん。素敵じゃないか、手紙。大切にしていればずっと残るし、何より書いてくれた相手の時間を思えば………それが愛しい」
私は思わず熱弁する。
「…………………そう、ですか。」
「熱弁しすぎたね。さぁ、帰ろうか」
「はい。」
私達は屋敷へと戻った。