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【刀剣乱舞】檜扇の伝記

第4章 極


「極?それは、一体」
長谷部が素直に興味を持ってくれたので、私は気をよくしながら答える。
「どうにも、君達は現在本来の力を取り戻せている訳じゃないらしいんだ。」
「……………いいえ、主の力は何時も偉大です!俺達は主が居てくれればそれだけで……」
「落ち着きなさい、長谷部。私が居なくなったりする訳じゃないよ。」
取り乱してくれた彼の心は、痛いほどに理解している。
こういうときの長谷部は迷子の子供みたいだ。泣き出しそうな顔をされると、思わず私は彼の手を引いていきたくなる。
「極というのはね、君達が自らを見つめて本来の力を取り戻すことなんだ。」
「それは、つまり俺達が何かを成すという事ですか?」
「幾つか、必要な条件はあるらしいけれど、そうだね。最終的には君達が一つ何かを乗り越えることさ」
私は長谷部の手を引く変わりに、長谷部の頬を両手で包み込んだ。
「君は全く、何時まで迷子なのだろうね。」
「!申し訳ありません………」
「怒っている訳じゃないんだ。今の君も可愛いと思う。……………だけど」
私は眼を逸らさない彼の眼を見つめて、笑う。
「君にはもう少し、安心して過ごしてほしいな。私は、君を何があっても愛してる。心からね」
「私が君を捨てる日なんて来やしないよ。無理はしないで、安心して。」
私が笑うと、長谷部は少し叱られた後の様にしゅんとした。
「……………主の愛を、疑っている訳ではないんです。貴方の愛は、何時も俺を満たしてくれている。けれど、だからこそ………こわいんです。」
「……………失う日が?」
長谷部は頷くことも肯定することもしなかった。
少しだけ泣きそうな眼で、ただ私を見るだけだ。
『私は不老不死だよ。君の前から居なくなるのは、君が居なくなるか、歴史修正主義者を滅ぼすまでだ』
浮かんできた理屈を、私はつまらないと投げ出して、彼をただ抱き締めた。
身をこわばらせた長谷部は、しかし直ぐに崩れ落ちて私を抱き締め返した。
願わくば、この繊細で臆病な神様が泣かなくてもいい優しい日が来ますように。
私は、ただ願う。
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