第5章 第四章 ドッペルゲンガーという概念は我々にはない
突然の二人の登場に驚く彼岸花。
呆然と整理できない現状についていこうとするが、そこで彼岸花は相手の太郎太刀にはもう二本腕があることを思い出した。
話は後。そう判断をくだすと、即座に立ち上がる。
「しっかし、これは中々にキッツいねぇ………!!」
「えぇ。次郎、大丈夫ですか?」
「もっちろん!舐めるんじゃないよ!!」
そう言うと同時に、相手の太郎太刀の鎌が二本揃って弾き返された。
「凄い!でも、まだ来る!!」
彼岸花が実況の様に叫ぶと、骨の腕が二人に振り下ろされる。
弾いた体勢のままの二人。その腹部へと腕が当たる………一秒前、再びそれを支える二人が現れた。
「っ!!何とか、間に合ったかな!!」
「ッチ………!」
今度現れたのは燭台切と大倶利伽羅。二人も相手の太郎太刀の腕を本体で受け止めると、それを弾き、一旦距離を取った。
「…………いやいやいや!なんで、こんなに居るの!?というか、タイミング狙いすぎだろ!もっと早くに出ろや!!助かったけども!」
叫ぶ彼岸花。若干置いていかれた彼女は、笑えばいいのか落ち込めばいいのか解らない気分だ。
頭を抱えそうになるのを抑えて、彼岸花は相手の太郎太刀を見る。
すると、隣に着地した燭台切が同じく太郎太刀を見ながらいった。
「獅子王君に言われたんだよ。君が山に走っていったから様子を見に行ってほしいって。随分と気を使わせたみたいだね。」
それを聞いて彼岸花は目を丸くした。同時に、少し目頭が熱くなる。
(信じてくれたんだ)
また逃げたんじゃないか、なんて言われると思っていた。でも、案外彼等との間に出来た絆は強かったらしい。
「そっか。なら、良かった。………ありがとう、来てくれて。」
「………ううん。当然の事さ。………さて、と。それで、彼は?」
気まずかったのか早々に話題を変える燭台切。彼岸花は、答える前に味方の太郎太刀を見た。
「えっと………闇落ちした太郎太刀だと思うんだけど、あの人ってドッペルゲンガーなの?」
「ドッペルゲンガー?いや、違うと思うよ。彼は他の本丸の太郎太刀だ」
その言葉に彼岸花は思い出した。そうだ、自分達は刀剣なのだと。
彼岸花だって百人居るし、普通に彼等は複数いるのだ。
「ど、ドッペルゲンガーという概念は我々にはないんや………」
「何言ってるの」