第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
「うおおおおおおたあぁぁぁぁぁ!会心の一撃ぃ!!」
叫んだ彼岸花が鐘を手に敵へと飛びかかる。
そのまま鐘を敵の頭に被せるように叩きつけると、敵は足をふらつかせながら後ろに下がった。
そこへ鶴丸の本体を使った一撃が入る。
それで、その場にいた最後の敵は絶命した。
「ふー、一段落」
「君、本当に刀を一切使わなかったな」
呆れたように鶴丸は言うが、その額には脂汗が浮いていた。
「鶴丸さん、刀納めても大丈夫ですよ」
「あぁ。」
鶴丸の精神が最も乗っ取られやすいのは、刀を抜いたときらしい。
これは、ここ数日間共に過ごした中で彼岸花が発見し、理解したことだ。
ーーー鶴丸と彼岸花が歴史修正主義者狩りを始めてから、おおよそ五日が経過した。
つまり、もうそろそろこの時代に取り残されてから一週間が経過することになる。
ここまでの道のりはまぁまぁ順調なもので、鶴丸は何度か危ない心境に陥りはしたが、完全に乗っ取られることは、あれ以降まだ無かった。
そして、彼岸花と鶴丸には未だ目立つ怪我もない。
これは、手入れ、というものを受けることの出来ない二人が一番気を付けていたことでもある。
気を付けていたから、怪我がないのは順調を越えて最高であると言えよう。
ただ良いことの続く一方で、良くないことも当然あった。
良くないこと、というのは語弊があるかもしれない。
正確には変化しないこと、だ。
それは鶴丸の現状の事である。
五日という時間が経過した中で、鶴丸の容態には何も変化がなかった。
悪くなっていない事をまず喜ぶべきかとも思うが、喜んだ上で次がないのだ。
彼岸花は、横目で汗をぬぐう鶴丸を見る。
鶴丸は平気そうなふりをしてはいるが、平気なわけがない。
彼岸花は肩を落として、空を見た。
(まだ五日だ。落ち込むにしても早すぎるか)
自分を励まして、彼岸花は死んだ敵の頭から鐘を抜き取る。
「君、それきちんと店に返すんだぞ」
「わかってまーす。」
彼岸花の持っている鐘は、つい先程そこの店から持ってきたものである。
「君なぁ幾ら見えていないからといって、売り物をそんな風に使うのはどうかと思うぞ」
鶴丸が呆れたように言った。