第5章 第四章 ドッペルゲンガーという概念は我々にはない
「あー!くっそ………じゃない、畜生!負けたー!!」
「言い直した意味があるのかい」
「あるとも。私は、下ネタを言わない女だからね。小娘とは担当が違うのさ」
「何いってるんだい」
「大切な戯言」
少しだけ冷や冷やしています。
肝が冷えるね。
「まぁ、それよか。勝てないなぁ………細いからいけると思ったのに」
「甘い。俺だって伊達に平安の世を生きてねーからな」
「……………………………平安?」
「おう。それに、細いって言うならお前の方が細いだろ」
「いや、待て。流すんじゃない。平安?君、何歳?」
「何歳って言うか、平安時代に作られたから大体千ね………」
「いや、いい。聞きたくない。………そうだねー、私も筋肉つけなきゃねー。あ、でも左文字兄弟の桜色の人の方が細いねー」
聞いてはいけない現実を知りかけて、彼岸花はそれを拒絶した。今はいい。夢を見るくらい許してくれないか。
「桜色、とは宗三殿の事でしょうか?確かに、あの方は細いですなぁ」
お供がしみじみと呟いたのを聞きながら、彼岸花はそれに同意した。
「あの人、本当に細いよね。ビックリした」
「まぁ、宗三はなー。でも、太っても似合わないと思う」
「つまり、私は太っても似合うと。うわー、嬉しいなー。イケメンにそんなこと言われちゃったー」
「何で怒るんだよ?」
解らないのか。改めてイケメンはデリカシーが足りない説を提唱するときが来たのかもしれない。
「……………怒ってないさ。…さて、話を戻そうか。どうすれば勝てるようになるのかな。そもそも、呼吸を読む作戦ってありだと思う?」
彼岸花が作戦について尋ねてみると、三人は揃って頷いた。
「呼吸は戦闘における重要事項の一つだからね。それを支配すれば、勝利に近づける筈だよ。」
「だな。呼吸さえ読めれば相手の手を読むことも出来るから、いいと思うぜ。」
「お二方の言う通りです!呼吸とは戦闘における、まさに個性!自身は乱さず、敵のは乱す!原点ですな!!」
「成る程。じゃあ、取り敢えずは呼吸を乱さない事から始めればいいのかな。」
首をかしげて彼岸花は考える。
「ですが、それでは勝つことは出来ませんぞ!」
「まぁ、先ずは負けないようにすればいいんじゃないかな。勝つのはその後だ。」
お供と歌仙の言葉に彼岸花は感心した。やはり、戦闘慣れしている刀は言うことが違う。