第2章 第一章 雨の日
「誰が、ゴミだ!性悪女!!!」
ーーー彼岸花叫んだ。腹の底から。
座敷に彼岸花の声が響く。主である少女と視線が交差するが、二人の間に和睦も和解も友好関係もなかった。
互いを否定する決定的な対立。
……………話はほんの数秒前まで遡る。
座敷を見渡す彼岸花は内心沸き上がってくる沸々とした疑問に、スッと、心が冷めていくのを感じた。
政府に監視されていた10日間。ある程度必要最低限の仕組みは聞かされていた。
それこそ、どんな刀が居るとか、何人居るとか、前の主同士の繋がりとか。…………正直、真面目に聞いておらずうろ覚えの所が多いのだが、そんな虫食いの知識でもここの異常さに気がついた。
ーーー傷をおっている者と、そうでない者の差。不穏な顔つきと、漂う殺気。そして、その全てを飲み込むような恐怖。
少女だけでなく、自分にも向けられた感情。
極めつけは…………彼岸花は主である少女を見た。
「…………君、なんかにおうね」
「………………………あぁ?」
少女に今にも刺されそうな目で見られる。しかし、今更引けないと彼岸花は続けた。
「単純な臭いじゃなくて、なんだろ……………………男の臭いがする。」
そう、口にした瞬間、彼岸花の背中に衝撃が走った。
ーーー突き飛ばされた。
そう気づいたときには、既に彼岸花の中でも何かが切れた。
「な、なにするんだ!!」
「………………はぁ?あんたこそ、何してんの?」
「…………………君に突き飛ばされてひっくり返ってる。」
絶対零度の声にも負けず言い返せば、少女の綺麗な顔が歪んだ。
グッと、前髪を捕まれて顔が近づく。
鼻と鼻がつく距離。だが、気分的にはドラキュラに血を吸われる一秒前だ。
「………新しい刀剣が来ると思って待っててやれば………ここまでの馬鹿とは。本当に、要らねぇことばかりしやがる。政府の豚ども」
「豚はお前だろ。」
「調子に乗んな。お前なんざ、ここではゴミとかわんねぇんだよ。拾われるのはてめぇの方だ。アホ」
…………………沈黙。
静寂が辺りを包んだ。……………いや、よくよけ聞くと、すすり泣く声が聞こえる。
「おい、誰だ。泣いてるやつ」
だが、そんな弱さは直ぐに拾い上げられる。
座敷へと向けられる視線に優しさも何もありはしない。