第2章 第一章 雨の日
ーーー雨の音が聞こえ始める。
それは、暗に場面が変わった事を表していた。
彼岸花「初日から雨か」
呟いたが、恐らく彼岸花を持っている青年には聞こえていないだろう。
先程、新たな我が家へと着き、出迎えてくれた青年に彼岸花は無事引き渡された。
彼岸花「というか、この人………震えてる?」
人の身になると今日はそこまで冷えるのだろうか。
辺りの様子が見えないので、音のみで気配を探る。
青年の足音が止まった。
ついたか。そう思いつつ、初めの挨拶はどうしようかと彼岸花は考える。
「主…………刀、届いたよ。」
襖の開く音。複数の呼吸音。雨の音。
聞こえてきたのはそれだけ。なんと、静かな事か。
「貸しなさい。」
「うん………」
少し強い、女性の声。今のが主の声だろうか。
彼岸花(って、ちょいまち。まずいぞ、女性?女子?え、え、どうしよう………話を合わせようとヱヴァンゲリ⭕ンしか見てないよ)
私ハ、ア⭕カ派デース。という、片言の戯れ言が脳内で溶けていく。知らなかった。女性も審神者できるのか。
全くもって一本とられたぜ。
やれやれと肩を竦める彼岸花。
ーーーと、
彼岸花「……………………あ」
そうこう考えている内に具現化される体。
目の前には不機嫌そうな少女の顔。…………18、9だろうか。
綺麗な人だなー。それが、初対面での感想だった。
彼岸花「えーっと……………よろしくだぜ!」
ポン、と少女に膝立ちで近寄り、その肩に手をおいた。
静まり返る座敷。
彼岸花「我が名は、彼岸花!逸話も戦歴もないけど、根性と自然を愛するエコノミー精神だけは誰にも負けないぜ!君も私と一緒にゴミ拾いにでも繰り出すか!!」
フレンドリーにして、自然を愛する博愛精神のアピール。…………完璧だった。
持てる最高の笑顔を新主へと向ける。………少女は無言だった。
人見知りさんかな、と自己完結しつつ振り返って座敷を見渡す。
彼岸花(これが、新しい仲間かぁ…………色男揃いなのは認めるけど、政府より辛気くさいな)
……………なんて、冗談である。
彼岸花は、早くも感じ始めた違和感に目を瞬かせた。