第4章 第三章 地球を大切にノーモア森林破壊
少し妙な歌仙が来たのは、彼岸花が倉の掃除をしていたときだ。
「王手を盗って遠雷帝♪サンスクリット求道系♪妄想信者踊る、酷く脆くー♪もう漠然と…………あれ、歌仙さんだ。」
何時も通り歌いながら床を拭いていた彼岸花は、雷鳴と共に現れた歌仙を見ていた。
うわー、神様みたい。なんて、思いながら立ち上がろうとして、歌仙の手に握られた彼岸花の本体を見た。
(あれ、歌仙さんが持ってるやつ。私だよな?うん?私今日本体どうしたっけ?)
倉に来たまでは持っていたはず…………あぁ、そうだ。倉の戸に立て掛けていたのだ。
「あっはは、歌仙さん。すみません、また戸に立て掛けたままだったみたいで…………って、あんさん何やってるでごわすか!?」
歌仙が彼岸花の本体を抜刀し、鞘を床へと捨てた。
流石に、彼岸花もおかしいと思い、声を張り上げるが返事はなし。
「ちょっと!?大丈夫かあんた!何かーーー憑かれた様な顔してるよ!?」
「!」
ピタリと歌仙の手が止まる。彼岸花の息も止まった。
「憑かれた?それは、誰に?」
「知るか!取り敢えず刀返せ、明らかに目がおかしいよ。なんだ、誰かに唆されたのか」
「違う。これは、僕の意思だ」
「ふーん。」
そこまで言って、彼岸花は雑巾を落とした。
此方を見ようともしない歌仙に歩み寄る。
「……………折ってもいいって、死んでもいいって思ったんだ。」
「……………そうだ」
「だとしたら、軽蔑する。最低だよ、君」
「………結構だ。最低でも、やらないといけないことがある。」
「誰かを傷つけることが、君のやることかい?本当に」
「……………君は、卑怯だ。どうして、そんな事が言えるんだい。」
「………………………理由がいるのかな。こんなことに」
息を吸って、彼岸花は続ける。
「心を持った者は、考えないといけないんだよ。誰かを傷つける事の寂しさを」
「寂しい?そんなわけない。僕は、寂しいだなんて………」
「思ってないのなら、折ればいいさ。そして、一生背負っていけばいい。理解しようと思わなかったら、君は永遠に一人だ。」
「………………………」
沈黙が落ちる。
彼岸花も歌仙から目を逸らし、外を見た。
「雨だね。君に今、この雨はどう聞こえてる?私にはね、煩わしく聞こえるよ。」
「だって、雨の音で君の声が聞こえやしない」