第4章 第三章 地球を大切にノーモア森林破壊
「変えようよ。一つずつ。私は、少なくともその気だし、もしも獅子王もそれを望んでくれるのなら一緒に、変えよう。」
笑わずに話す。一つ、彼の心に踏み込んだ。
「……………………変えれるか?俺は、それもわかんねぇ。」
「変えれるさ。案外難しいことじゃない。言葉が通じる者同士。獅子王がこうして私の言葉を聞いてくれたように、変わるものはあると思うんだ。時間は流れるよ。野菜だって実るし、ご飯だって作るときが来る。なら、何が変わらないものか」
「…………………そうだよな。ここで廃っちゃじっちゃんに会わせる顔がねぇよな。」
獅子王の手が再び動き出す。彼岸花は密かに息を吐いた。
愛染が此方を見ている。どうやら、今のは聞いていたようだ。
彼岸花が手を振ると、少しだけ迷って振り返してくれた。
何かが、進んだ。それを、彼岸花は嬉しく思うのだった。
(ご飯を作るにしても、台所ってどうなってるんやろ。)
畑仕事が終わり、ふと思った彼岸花。
脳裏に浮かぶのはうっすらと埃の積もった部屋と、真っ白な倉。
もし台所もそうであったら後々苦労しそうだ。
(しゃーない。様子見に行くか)
屋敷へと帰る道を一人歩きながら(倉に寄っていた為一人)、空を見上げる。思い出すのは新たな約束。
水やりが終わった後、愛染が走り寄ってきて言ったのだ。
『野菜が実ったらさ!俺にも教えてくれよな!料理!!』
彼岸花が驚きつつ頷くと、彼は嬉しそうに獅子王へとそれを報告しに行った。
きっと、彼の大事な人は彼の手料理に大喜びするだろう。それは、幸福と呼んでもいいんじゃないだろうか。
胸が温かくなる。これもまた、幸福と呼べる感情。
優しい約束に軽くなる足。見上げている空は透き通っている。
「頑張りますか」
自分に渇を入れて、彼岸花は屋敷の塀を越えた。
数分後、彼岸花が台所を見て愕然とするのは、まだ先の話である。