第4章 第三章 地球を大切にノーモア森林破壊
見た目のイメージを大きく裏切った青年の声に彼岸花は驚く。
「えっと、倉に何か御用ですか?」
んなわけあるかい。と、思いつつ一応聞いてみる。
「いいえ。鳴狐は、貴方のお手伝いをしに来たのです!」
「て、手伝い?うわー。今日はよく話しかけてくるなぁ。」
「ご迷惑でしたか?」
聞かれて、彼岸花は首を振った。
「いいえ。助かるよ。人手は多い方がいいからね。」
それは確かに本当ではあるが、何よりもそういう気を起こしてくれた事が嬉しかった。
これだけで恵まれているなぁ、と思う。
(そういや、あいつの名前も恵か。似合わねぇな)
ふと彼岸花がそう思っていると、急に青年が歩み寄ってきた。
一瞬戸惑ったが、ここで逃げてはならない。折角彼が手伝うと言ってくれたのだ。
『手伝ってやるよ………お前が死ぬのをなぁ!!』みたいな豹変があろうとも、信じてみない事には何も始まらない。
顔に微笑みを称え待機する彼岸花。
彼が目の前まで来ると、その首元に何かが居ることに気がついた。
(あれ、こんのすけの仲間?)
いや、こちらの方は二頭身じゃない。スリムだし、化粧もない。本当の狐だ。
(本当の狐ってじゃあ、こいつはなんなんだ?)
頭上の狐はマスコット的な何かなのか。あ、いや、管狐だった。
「ならば、早速!鳴狐!」
彼岸花が凝視していた狐が口を動かす。…………あれ?喋った?
「………………持つよ」
不意に聞こえた落ち着いた声。
「え、あ。どうもありがとう」
礼を述べるが、何だろうか。この、不信感。
彼が信じられないという意味ではなく、何だが狐に摘ままれたかのような。
(どっちが喋ってるの?)
馬鹿な質問だとは思うが、そうとしか言えない。
如雨露を持ってくれた彼は、彼岸花を軽く見るとそのまま踵を返して畑へと歩いていってしまった。
葛籠を持った彼岸花は、慌ててその後を追う。
林に入ろうとして、足元がスッキリしている事に気がついた。
(道ができている………)
雑草が刈られて一本道が出来ているのだ。
誰かがやってくれたのだろうか。ならば、後で礼を言わねば。
「こんのすけ………!本当に、ここはいい人だらけだね」
「え?」
感動して呟く彼岸花。
「後でお礼を言わないとだ」
弾む気持ちを抑えて、彼岸花は笑った。
畑仕事、中々楽しくなりそうじゃないか。