第4章 第三章 地球を大切にノーモア森林破壊
そういや、ここも山ではあるが鹿とかはいるのだろうか。
足は止めずに林の方を見る。わざわざ探しに行こうとは思わないが、いるのなら出てきてほしいものだ。
考えつつ、尚も彼岸花の足は畑を目指した。
そろそろ話すが、彼岸花の思い付きというのは、畑に野菜を植えることだ。
この本丸に、食事というものは出ない。
初日にこんのすけに聞いて愕然としたが、どうにも小娘は刀剣達に食事を提供する気はないらしく、自分の食事は勝手に自室でとっているのだとか。…………何を食べているのだろう。ロー⭕ンの弁当?唐揚げ⭕んなら直訴も辞さない。
刀剣なので、空腹で死ぬことはないが、あの空腹特有の切なさはある。
きっと、他の刀剣達もそうなのではないだろうか。
空腹時にはどうしようもなく気持ちが下向きになるものである。それに、小娘だって手料理を食べた方がいいと思う。
あいつは嫌いだが、問題の根本的な解決には必要な存在だ。
その辺を踏まえて、取り敢えず安定して野菜が採れるようになれば大分かわるだろうと彼岸花は考えたのだ。
「…………………ついたか」
呟いて、足を止める。柵を越えると、広い畑が彼岸花を待っていた。
「今何時か教えてー♪夢といってー抱きしめてー♪」
この時代から見れば大昔の歌をうたう。
気分はマイケル。観客は蚯蚓だが、寧ろ大歓迎。
蚯蚓が居るということは、まだこの土は使える。雑草を抜きながら、彼岸花はご機嫌であった。
「止まりかけたあたしの心を動かしてー♪おーねがい♪」
この歌うという行為には、一つに彼岸花がここに居ることを教える意味もあった。
というのも、もし刀剣男子がここに来たとして、いきなり彼岸花を見つけたらさぞ驚くだろう。場合によってはそこで斬りかかってくるかもしれない。
しかぁし!歌をうたっていればどうだろうか。声によって、畑の外でも彼岸花が居ることが解るし、呑気に歌う相手にいきなり斬りかかろうなどと普通は思わない。
問題は、普通じゃないやつが多すぎる事なのだが、そこはこの際構わない。接触できれば吉だ。
「…………ふぅ」
一旦息をついて立ち上がり、額の汗を拭う。
しゃがんでいるときは解らなかったが、立つと全然終わっていない事に気がついた。畑は広い。
とても一人でやる広さでは無いが、出陣に比べれば全然楽しいし、気長にやろう。