第4章 第三章 地球を大切にノーモア森林破壊
ーーー現在午前6時。
彼岸花は縁側にてグッと体を伸ばした。
「いい天気だ。」
(さて、行きますか)
ゆっくりと歩き出す彼岸花。目指すは、道場。
「いやー。流石にね、昨日のは彼岸花さんでも堪えましたわ。あれっすよね、あれ。もう少し刀くらいは上手く使えるようにならないと。馬鹿と刀は使いようってね」
頑張るぞ。と、独り言を小声で言いつつ、道場への廊下を歩く。
時間が時間なので、本丸は静かなもんだ。……………あ、いつものことか。
小娘の独裁下であるこの本丸に、笑い声も何も聞こえはしない。
根本的な問題として、彼岸花はまだこの本丸の事を知らない。
知っているのは、過ぎた兄弟愛くらいなものだ。
もっと色んな話をしたいのだが、出来る相手がいない。
こんのすけに根掘り葉掘り聞くのも、何だか気が引けるし、いつなんどき呪いに触れるかもわからない。
(なにか、打開策を用意せねばなー)
歩いていると、前方に二人の人物。
彼岸花よりも、更にゆっくりと歩くその二人は、なんとビックリ昨日戦場を共にした仲間ではないか。
加州清光と、大和守安定。
仲良し?の二人は、今日も並んで歩いている。
恐らく、二人は彼岸花に気が付いているだろう。背後を取れるほど彼岸花はまだ、強くない。
ならば、なぜ振り向かないのか。
簡単だよ。無視されているのさ。
昨日、薬研が広めた彼岸花脱走事件は思いの外、しつこく監獄内を巡っていた。
直接何か言ってくる奴は居なかったが、視線は既に警戒から敵意へとランクアップしていた。
(つーか、あの薬研とかいう短刀は謝ったんじゃなかったのか…………)
いや、まぁ、悪い噂ほどワイシャツにこぼした醤油の様に消えないものだ。
今さら、薬研が実は嘘でした、なんて言ったところで何が変わるとも思えない。
噂に振り回されるてめぇらこそ人間臭いぞ。言ってやりたいが、それこそ最後の砦を自らかち割る行為にしかならんので、自重。
そんなこんなで、考えているうちに道場前。
途中から予想がついていたが、仲良し二人組も道場に用事があるらしい。
(まぁ、別に一緒に鍛練してもいいか)
寧ろ、仲良くなれるチャンス。…………ポジティブ。
「あ、清光。ちょっと待って」
仲良し二人組の片割れ、大和守が立ち止まる。
そして、奴は彼岸花をようやく振り返った。