第3章 第二章 変化を求める、カメレオン
ーーー槍が殺されていた。
そいつは恐らく、彼岸花が倒した連中の逃げた一人だろう。
そう、少なくとも彼岸花はそう解釈していた。
けれど、もしそれが最初から罠だったら?
(どうして、こんな簡単な事に気がつかなかった?)
彼岸花は、あの崖へと恐らく意図的に追い詰められた。
もし、彼岸花が敵の立場なら、はぐれた一人より残りの仲間へと戦力を回す。
ならば、あの槍は逃げ遅れたのではなく最初から他の刀剣達を狙っていたということになる。
今思えば、他の槍とあの串刺しになっていた奴は、微妙に形状が違っていた気がする。
ということは、だ。彼岸花を追い詰めていた七体は只の雑魚で、残った刀剣達を狙ったのがボスクラスの化け物だった?あぁ、そうか。それもそうなのだ。思えば、彼岸花はど素人なのだ。大和守をやったやつ七体に勝てるわけもない。
気付いてしまえば、自分が恥ずかしかった。恥じなどないと言っては見たが、もちろん冗談である。
近寄ってくる、見知らぬ仲間の顔をした女。
拒絶の色を出せば、女は止まり、踵を返した。
突如として林へと走っていく女。
その直ぐ後、どこからか敵が現れた。
戦闘が終わっても、女は帰ってこない。
以上を踏まえると、そりゃあ逃げたと思うしかない。
なんと、なんと面白い運命の悪戯か。
「…………………心当たりは、見つかりましたかな」
「…………………」
「招かれざる者には死を。先に、牙を剥いたのはあなたの方です。ーーーせいぜい、地獄にて悶え苦しんでください」
「……………………………なんでだよ」
呼び掛けには答えず、一期は刀を抜いた。
盛大な金属音が響いたーーー。
「っな!…………………まだ、抵抗するつもりですか?せめて、最後くらいは綺麗に幕を下ろしたらどうです!!」
「……………………………嫌だ。」
「……………………ならば、このまま押しきらせていただく。」
ギリギリと音がなる。刀を支える手が震えた。
流石としかいいようがないが、彼岸花とて諦めるわけにはいかなかった。
「人の話を聞け!私は!逃げたんじゃない!!他の槍を殺しに行ったんだ!貴方に殺される理由なんか、何一つ持ち合わせちゃいないね!」
「まだ言いますか。往生際の悪い」
「悪くて結構だね。私には、引けない誇りがある」