第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
これが、彼岸花の送れる最高の言葉だった。
彼岸花はまだ、鶴丸の何を知っている訳でもない。
きっと、その心の全てを知るのはもっと後の事になるだろうし、何よりそれは、今を乗りきった先にしかない。
鶴丸の目に溜まった涙を見ながら、彼岸花は一つ、決意をするのであった。
「鶴丸さん。私は、私の意思で貴方を助けたい。助けて、あの本丸で、また何処かで、何気ない日常を一緒に過ごしたいんです」
争うことは、あんまり好きではないから。出来たら、花でも見て笑いながら生きていきたい。……………皆で。
彼岸花の言葉に鶴丸は、その顔によく似合う笑顔を見せてくれた。
「すごい口説き文句だな。………それじゃあまるで、求婚みたいじゃないか。」
憎まれ口を叩いて、相手の鶴丸と同じく笑いの浅い鶴丸は、そのままクスクスと笑いだした。
彼岸花はそれを同じく笑いながら見ている。
ほんの一時、二人の間に和やかな空気が流れた。
「なぁ、君」
そんな空気のなかで、鶴丸は不意に言葉を落とす。
「なんですか?」
「そんな風に、過ごせたらいいな」
不安混じりの希望に、彼岸花は笑い返した。
「過ごせますよ。一緒に、帰りましょう」
時間は流れ、何時までも和んでいる訳にはいかないので、彼岸花と鶴丸は現在考えていた。
「まぁ、俺のせいで他の刀剣達に協力は仰げなくなったんだが、どうする?」
先程より元気になった鶴丸は、若干通常運転に切り替わりながら彼岸花に尋ねた。
悪びれもしなくなってきた鶴丸に彼岸花は内心呆れつつ、首をかしげる。
「というか、なんで他の人に鶴丸さんがそう見えるのか、という問題が一切解決もなにもしてないんですよね」
「そうだなぁ。相変わらず、君には普通に見えているんだろう?」
「はい。うーん、何か妙な術でもかけられたんですかね。鶴丸さん自身、何か身体に変化は?」
「ないな」
即答されてしまった。
まぁ、ないに越したことはないのだが、手掛かりも何もない現状としては、何かあった方が助かったような気もする。
「それは何より。…………と、まぁふりだしどころか、最初よりも悪い状況になりましたが、うーん、迂闊に街を歩いてまた刀剣に会うのもなぁ………」
天井を仰いで、彼岸花は頭を悩ませた。