第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
見方の鶴丸は、茫然と立っていた。
相手の刀剣達から向けられる視線を、何となくですら理解できていないようである。
彼岸花も同じだった。
「っ!」
それでも何とか刀を弾き返し、彼岸花は鶴丸に駆け寄る。
「しっかりしてください!」
肩を揺らして彼岸花が呼び掛けると、ようやくハッとしたように目を瞬かせて、鶴丸は彼岸花を見る。
「君、これは一体………」
問いかけてくる鶴丸には悪いが、彼岸花にだってわからなかった。
「そんなもの、とは。どういう意味ですか」
相手の鶴丸に聞いてみると、彼はあっさりと答える。
「敵の癖に妙なことを聞くな。どういう意味もなにも、化け物でしかないだろう」
「は……………」
何を言っている。
彼岸花は反論しようとした。
「おい、鶴丸。戦闘の最中に何をしている」
だが、それを邪魔するように相手の刀剣、へし切長谷部が登場してしまう。
「長谷部。いやな、彼女が…………」
「敵と話すことなどない。早く始末しろ」
「はー、君ってやつはどうしてそう真面目なのかねぇ」
「当然のことだ。いいから、早くしろよ。いち早く本丸に帰って主に会いたい」
「はいはい。」
呑気に会話をする二人を、彼岸花は何処か冷めた目で見ていた。
いや、冷めた目、というだけでは足りないかもしれない。正確には、もっと、沢山の感情が籠った目で見ている。
相手の鶴丸国永が彼岸花を見る。
刀を向ける彼に、彼岸花は口を開いた
「化け物って、なんだよ」
しつこく尋ねる彼岸花に、相手の鶴丸は眉を潜める。
しかしだからといって、聞かないわけにはいかなかった。聞かないままでは、いられなかった。
「なんだよ、と言われてもな。どう見たって、そうとしかいい様のない風貌だろうに」
「人には、見えないと?」
「あぁ。当たり前だろう」
「………………………………」
嘘をついているようには見えない。
ならば、本当にそう見えている?
彼岸花は、鶴丸を振り返った。
(鶴丸さん、だよね)
彼岸花にはそう見える。
この本丸に来て、誰も皆、そう呼んでいた存在。
もしかすると………
(鶴丸さんを知らない人には、そうは見えていない?)
まさか……………いや、だとすればそれは何時から?
彼岸花は新たな問題を前に、鶴丸と二人立ち尽くした。