第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
「おい、お前はしってんだろ?いい加減黙りはやめてもらえますかね。あんまり酷いともう一撃くらわせるぞ、こら」
大通りから少し外れた路地。そこで敵の短刀へと詰め寄る彼岸花。
彼岸花に首根っこ(?)を掴まれた敵の短刀は、本体も取り上げられ、動くことすら叶わないようであった。
あんまりなその状況に、傍観者と徹していた鶴丸も、いい加減可哀想に思い始めていた。
そんな頃、二人の背後で鋭い金属音がした。
直ぐにわかる。誰かが刀を使って戦っているのだ。
二人は顔を見合わせると、彼岸花は短刀を川へと放り投げて、鶴丸はそれを見て、大通りへと出た。
大通りは先程までとはうって変わって、しんとしていた。それはまるで、人ならざる彼等に遠慮をしたようでもあった。
刀剣と歴史修正主義者達が戦っている。
この機会を逃してはならない、と彼岸花は鶴丸の手を引いて走り出した。
「あ、おい、君!」
鶴丸の焦る声が聞こえるが、今は気にして立ち止まる訳にもいかなかった。
どんどんと戦場が近付いてくる。
一歩二歩と進むにつれ、刀がぶつかる音も大きくなってきた。
そして、その瞬間はくる。
戦っている刀剣達の中に、鶴丸国永がいた。
彼は走ってくる彼岸花達に気がつくと、一瞬目を見開いて、そしてそれからーーー刀を振り上げた。
戦闘時の出来事である、刀を振り上げること事態に問題はないだろう。
しかしここで、問題は発生していた。
「!?」
振り上げられた刀は、彼岸花へと振り下ろされたのである。
金属音がした。
下りてきた刀、彼岸花は鶴丸の手を放して、刀を抜き、それを受け止めた。
「………………………お、おーまいごっど!?」
彼岸花は声をあげて自らの感情を叫んだ。
そのすっとんきょんな叫びに、他の刀剣達は驚き、敵の前にしながらも彼岸花達を見た。
彼岸花は、不思議に思った。
何故なら、彼岸花達を見る刀剣達の目が、始めは驚きに満ちていたのに、やがて闘志を持ち始めたからだ。
彼岸花自身、自らが怪しい者であることは自覚している。でも、この目は、まるで、歴史修正主義者を見るような………
「な、何故?」
「何故?君、そんなものを連れてきておいて、よく言うな」
(そんなもの、って…)
彼岸花は、相手の鶴丸の見る、仲間の鶴丸を見た。