第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
罪滅ぼしのつもりならするな、ということだ。
彼岸花が鶴丸を助けるのは、助けたいと思った己の意思に従うからだ。
そこに、他の何を混ぜてもいけない。
感謝されたいとか、失敗に対する弁解とか、そんな軽いなにかに流されるのなら、いっそやらないほうがましだ。
三日月の事は、彼岸花の心の中で向き合うべきこと。
そうしないと、三日月にも、他の誰にも、失礼だ。
(三日月さん…………ごめんなさい)
謝罪しか口に出せない己の事を、彼岸花はすごく弱い奴なのだと知っている。
(こんなとき、どうすればいいのかすらわからないんだ。)
彼岸花はそっと、目を閉じた。
「そ、こ、の、誰かさーん♪準備、そろそろオッケー?それじゃお知らせしましょ♪パピコの元気予報♪」
「朝一番から元気だな、君は」
眠そうに何度も瞬きを繰り返して、鶴丸は呟いた。
「元気というよりは、まぁ、テンション上げるために歌うんですよ」
「ほー。というより、パピコってのは………」
「正確にはわぴこなんだけど、それを言うと色々と不味い事があってね。間にピー音か、○を挟むことになるよ」
彼岸花はそう言ってから、「因みにこの歌がわかる人は、結構懐かしい歌を知ってらっしゃるお姉さまだね」と付け足した。
ボロ小屋で一夜を過ごした彼岸花達。
次の日の朝、日が昇って直ぐの頃、二人は小屋を出た。
外は今だ雨が降っている。昨晩は少し止んだりしていたのだが。
(露時期なんですかね)
そう予想してみるが、答えを確認する術はない。
「それじゃあ、先ずはこの時代を見て回りましょうか」
「あぁ、了解。出来たら、昨日君が会ったように他の本丸の刀にでも会えればいいんだがな」
「一応昨日、山姥切さんにそういったことを聞いてみたんですけど………」
彼岸花が言葉を濁して、暗に情報を掴めなかった事を伝えると、鶴丸はわかっていた、という風に頷いた。
「俺が言いたいのはな、刀の方じゃなくて審神者の方だ。正規にここに来た連中なら通信機くらい持っているはずだからな」
言われて彼岸花はその通りだと、はっとした。
「な、なるほど。うわぁ、何故思いつかなかったんだ昨日の私」
「そんなもんさ。焦ってるときほど見えなくなる」
笑顔の鶴丸とは対照的に彼岸花はため息をついた。