
第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ

始まるわけがなかった。
「とりあえず、暗いので活動は明日になってから朝一で行きましょうか」
「あぁ。そうだな………………って、君。何処で寝るつもりなんだ」
鶴丸の唐突な質問に彼岸花は首をかしげる。
「いや、どこって言うほどの選択肢がないんですけど」
言っておくがこの小屋は土間のある一部屋のみである。
「え、まさか、外で寝ろと?」
「いや、そういう意味じゃないんだが……………………まぁ、君が気にしないのならいい。」
「はぁ、そうですか。………それよか、じゃあ寝ますか」
言って彼岸花は、ごろりと土間から上がった場所に寝転んだ。
鶴丸のいる場所は反対側の壁際である。
「………………普通、俺がそっちじゃないか?敵が来るとも限らない訳だし」
「いやいや、怪我人(?)を危険には晒しませんよ。大丈夫、私が守るので安心して眠ってください」
「変なところで男前だな君」
言いながらも疲れていたのだろう。軽く目を閉じると、そのまま鶴丸は眠ってしまった。
彼岸花は一人、天井のしみを見ながら思考を巡らせる。
(にしてもなー、何でこんな事になったんだろ)
やはり、取り憑かれた鶴丸が原因?
(だとしても、何故あのタイミングで。)
ただの偶然?
(しかも、この時代)
もしかしたら、この時代に何かあるのかも。
(何か?)
何かって、何だ。
(なんだろう)
ともかく、安請け合いだとしても受けた以上彼岸花には何とかする義務があった。
義務という言葉は嫌いだが、この場合はそうとしか言いようがない。
何とかしなければ。
(もう、失敗は出来ない)
失敗なんて言葉では、ごまかせない。
(三日月さん…………………)
自分はいったい、何を変えられただろう。
鶴丸が騒動を起こした事、実は内心ほっとしていた。
何故なら、帰るまでは三日月の事を先伸ばしにできるからだ。
たくさんの言葉をもらって、それに背を押されて、三日月と対峙した。あの時の自分を、褒めながらぼこぼこにしてやりたい。
きっと今頃、皆起きない三日月を心配していることだろう。
そしてしばらくすれば、察してしまうだろう。
自らの口でそれを伝えずに済んだこと、それを喜んでいる自分の存在が、彼岸花は何よりも最低な事に思えた。
鶴丸を助けたい。今はそう思っている。
でもその思いに対して肝に命じなければいけないことがある。
