第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
「絶対に、助けます」
小指を差し出すと、鶴丸は少し目を見開いた。
彼もまた彼岸花へと小指を近づけたが、己の手を見て動きが止まった。
「……………いいのか、このまま触れたら君に移るかもしれないぞ」
「んな訳ありませんよ。さっきから寝てるときに触ったりしてたんですし」
「恐くないのか?」
「恐くないですよ。そういうのは昔から平気なんです」
そう言ってから、彼岸花は「それに、」と続けた。
「怪我や病気で苦しんでる人の気持ちはわかるんです。そんな心無いこと、しませんよ」
「………………俺のは呪いだけどな」
彼岸花の目が真剣だったからか、鶴丸はそれだけいって、自らの小指を彼岸花の小指に絡めた。
「指切りげんまん。嘘ついたら針千本飲ーます、死んだら御免」
「ず、随分と恐い歌だな」
「それだけ約束ってのは重いんです」
彼岸花は笑って、指切った、と言った。
約束は重い。わかっている。
「それじゃあ、今後についての作戦会議といきましょうか」
彼岸花が提案すると、鶴丸がパッと掌を彼岸花に向けて、待ったの意を示した。
「なんすか?」
「会議の前に、さっきから言っておきたい事がある」
「はい。」
「俺は、その………君も見た通り、あの黒い靄に操られる………場合がある。その時は、誰であろうと刃を向けるだろう。君は、それでも………」
「それでも、貴方を助けます」
即答だった。
その返事に、鶴丸はまた、困ったような顔をして頷いた。
「わかった。……………じゃあ、会議を始めようか」
「うぃっす」
「それで、まず今後についてなんだが、どうするつもりなんだ?」
「まぁ、先ずは七面を抜けるべきですよね。どうにかして本丸に戻らないと。呪いについても、ここじゃあどうしようも出来ませんし」
刀を立てて己の額に乗せながらバランスをとっている彼岸花は、そう答えた。
「そりゃそうか………………といっても、どうやって戻る?唐突に来たからなんの準備もないし、そもそも手段がわからんだろ」
「うーん。情報が少なすぎるんですよね、何よりも先に情報収集かなぁ」
「妥当だな………………ところで君、さっきから何やってるんだ」
「え?」
刀を額からおろして、彼岸花は返事をする。
鶴丸と彼岸花の凸凹コンビの旅はここから始まった。