第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
「君の申し出はありがたいが、どうだい何か宛はあるのか?こう言っちゃあなんだが、俺だってこの二年間必死に打開策を探し続けたんだ。でも………」
「見つからなかった。わかってます。わかってますよ、そんなことは」
何もしないでいたなどと、最初から思っていない。
きっと、鶴丸は鶴丸なりに考えて、足掻いてきたのだろう。しかしそれも最早、限界を迎えようとしている。
今はまだ彼岸花の様な親しくない者しか襲ってはいないが、それがいつ、他の者へと向くか解ったものじゃない。
それはきっと、鶴丸にとって物凄く恐いことだろう。
いっそ、己が死ぬことより恐いはずだ。
だから鶴丸は、そちらを選ぶしかなかった。
理解している。それくらい、わかる。
だがそれでも、否、だからこそ彼岸花は鶴丸を死なせる訳にはいかない。
「…………………みっちゃんがね、貴方と一騎討ちをする前に言ったんですよ。『頼んだよ』って」
「………光忠がか」
彼岸花は頷いた。
「みっちゃんは、貴方を待っている。他の人も、貴方を待っている。きっと、大倶利伽羅さんも」
敢えて大倶利伽羅の方はそう呼んで、彼岸花は鶴丸に伝えなくてはいけないことがあった。
「貴方が、それを理解した上でもまだ死のうとするのなら、私はそれを許さない」
許せない。
「偉そうだとか、思いませんよ。言いたいことは言わせてもらいます。鶴丸さん、貴方じゃないと駄目なんです。貴方の心じゃないと、意味がない。」
彼岸花は言った。
鶴丸は、驚いたように目を丸くしている。
丸くして、何かを言おうとしては、それを喉に詰まらせて。鶴丸は、彼岸花の言葉を聞いていた。
「……………月並みな台詞だな」
遂に出てきた言葉は、震えていて、困ったような響きがあった。
「それでも、私の本心です」
「わかってる。わかってるさ…………………」
俯いて、自らの腕を見て、鶴丸は何を考えているのだろうか。
彼岸花はゆっくりと、彼の続く言葉を待った。
鶴丸の腕に、着物に、雫が落ちても、待った。
「…………………………………………なぁ、君。俺もまた、月並みな台詞を、驚きのない事を言ってもいいか」
「聞きましょう」
彼岸花は微笑んだ。
「助けてくれ」