第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
人がもう何年も使っていないであろうその小屋に、山姥切が鶴丸を背負って入っていく。
二人が濡れないようにと傘を掲げていた彼岸花も、そこでようやく傘を畳むことが出来た。
傘を戸にかけるようにして置き、室内を見回した。
「雨漏りは…………ない。おぉ~、これならばここにすむことも出来るでしょうな」
「住むのか………やめておけ。何時歴史修正主義者が来るともわからん」
「はははっ、そんなの我が家でも一緒ですよ」
「………………審神者は結界をはっていないのか?」
「企業秘密ですね。流石にすべてを話す訳にはいかんよ」
「……………そうか。」
山姥切は短く返事をすると、鶴丸を床におろそうとした。
「あ、まって。羽織りはとらないと」
彼岸花が駆け寄り鶴丸の羽織りを剥ぐと、山姥切が話しかけてきた。
「あんた達は二人なのか」
「うーん。うん、まぁ」
「……………何故ここに二人で」
「いや、来たくて来たんじゃないよ」
彼岸花の返事に、山姥切は眉をひそめて怪訝そうな顔をした。
「山姥切さん達は出陣ですよね。えーと、ここまで来て戴いた後に言うのもなんなのですが、部隊の人たちはいいの?」
彼岸花が話題を変える意味も含めて聞いてみると、山姥切はちょっと考えてから頷いた。
「大丈夫だ。あいつらも強い。それに、ここであんた達を見捨てたら俺が主に怒鳴られる」
山姥切の言葉には少し苦笑いのような色が滲んでいた。
だが、それ以上に語る表情は穏やかで、審神者に対する信頼が表れていた。
彼岸花は何となく察した彼の背景に内心微笑んで、口を開く。
「いい主なんだね」
「あぁ。…………………………………っ、そ、それであんた達はこれからどうするつもりなんだ」
素直に褒めたことが照れ臭かったのか、少し間をおいて顔を赤くした山姥切は、若干早口に問いかけてきた。
「えーと、帰るよ。何時までもここにはいられないし。」
「そうか。」
「………………で、本題なんですけど」
「?なんだ」
「ここ、何処ですか?」
「……………………………………………………町外れの小屋(空き家)だな」
「じゃなくて、この時代と場所です」
「…………………………………………………………………」
長い沈黙がおちた。
その間、山姥切は彼岸花の言葉に別の意図がないかと考えていたが、遂に見当たらずそのままを口にした。