第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
彼岸花が首をかしげること数秒。
背中にぞわりと悪寒が走った。
この感覚には覚えがあった。いや、覚えしかなかった。
「歴史修正主義者…………」
彼岸花の呟きに山姥切は刀の柄に触れながら、口を開いた。
「みたいだな。どうする、あんたの仲間は戦える状況ではないみたいだが」
「私一人でも……………と、言いたいのだけどこっちも事情がありましてね。うーん、どないしよか」
「……………迷っているのなら隠れていろ。俺が戦う」
非常にありがたく格好いい申し出である。
しかし、素直に頷くには少し心配もあった
「一人で?」
彼岸花の言葉に、山姥切は少し間をおいてから薄く微笑んだ。
「いいや、我が部隊でだ」
山姥切の言葉が終わった直後、民家の間から歴史修正主義者が顔を出した。
「……………………………………ん?あ、これ」
「持っていろ」
持たされたのは傘。
彼岸花が鶴丸を引きずり少し後に下がると、山姥切は歴史修正主義者の群れへと突っ込んでいった。
その戦いを見守ること数分。
気がつくと、確かに群れと戦う刀剣達が増えている。
どうやら、彼の方は一人じゃなかったようだ。
……………………彼岸花の方も、一人じゃない。
(……………というか、なんか見たことないやついる)
ボケー、と戦闘を見ていた彼岸花は思った。
歴史修正主義者の群れの中に、見たことのない奴がいたのである。大きさ的には、恐らく短刀と脇差し。
彼岸花にだって何度か出陣した経験があるのだが、その経験の中に奴等は居なかった。
奴等がなんなのかは解らないが、見たことがない、ということは新しい敵、の可能性が高いということになる。
(新しい敵、見たことのない景色、おやおやぁ?なんか、嫌な予感がすルソー)
ルソー。
冷や汗をかく彼岸花の予感は、間もなく現実のものとなってしまった。
「この小屋なら、雨宿り位はできるだろう。」
「わー、ボロボロだー」
間抜けなことを言いながら、彼岸花は必死に傘を高く掲げた。
「大丈夫か」
「うぃっす。平気っす」
つま先立ちで腕を震わせながら言っても信憑性は無いだろうが、山姥切にはもっと重いものを持ってもらっているので、文句は言えない。
「つまり、俺をここに運んだのはその別本丸の山姥切というわけか」
「うん。」