第10章 第九章 七面鳥の呪いですか?いいえ、七面の祝福ですよ
ーーー数分前。
彼岸花は大変困っていた。
「この人、痩せてるのにメッサ重たい」
鶴丸の体に腕を回して(妙な意味に捉えた奴は産んでくれた両親に謝れ)立ち上がろうとする事数分。
簡単に持ち上がると思った鶴丸は全く持ち上がる気配を見せず、彼岸花は足を生まれたての小鹿の様にしながら踏ん張っていた。
「お、おうふ。まさかの詰んだ?えー、雨冷たいよー。せめて何処か屋根のあるところに行きたいよー。」
ブーブー言っても仕方がないことくらい知ってはいる。いるが、しかしそれでも言わないとやってられない。
助けを求めようにも、彼岸花達は付喪神であるし。というかそもそも、人が通らないし。
「……………………………………………………………………………………………………………………引きずるか」
ポツリと彼岸花はいきついた結論をもらした。
鶴丸の腕をつかんで引っ張ろうとしたその時、不意に雨がやんだ。
「ん?」
見上げると視界に入る水色の何か。骨組みのついたそれは、傘の端だ。
一体誰が、と彼岸花が振り返ればそれと同時に声がかけられる。
「こんなところにいたら風邪を引くぞ」
(……………この声、は)
聞いたことがある。
彼岸花に傘を差してくれた人物。
それは、山姥切国広であった。
「………………………え、な、何故ここに」
気が動転して普通のことしか口にできない。
だがすぐに、彼の正体に気がついた。
(あぁ、そうか。別の本丸の………)
納得すると、少し寂しく思ってしまった。
ここだけの話、実は彼岸花は山姥切と話をしたかったのである。
まぁ、その話は今は割愛。
彼岸花は鶴丸を少し引き寄せて、傘の内側に頭だけでも入るようにすると、山姥切を見上げた。
「えっと、傘。ありがとうございます」
かろうじて述べることのできた礼。
山姥切は軽く頷くと、彼岸花が引き寄せた鶴丸を見た。
「………………あんたは、そいつの主なのか?」
「……………はい?」
予想外の質問。
「いや、私は彼と同じ付喪神ですけど。あれ、知らない?」
彼岸花の言葉に、山姥切は驚いたように一瞬目を丸くした。
この反応から察すると知らないようである。
(ま、まぁ、私一応レアですし)
仕方ないのだろうか?