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〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾


三日月の眼の中に、月を見た。
そしてその時、二人を繋いでいた脆い何かが崩れさって、そして…………三日月の手が滑り落ちた。
「えっ」
いんちきな重力に従って、三日月が闇の中へと落ちていく。
彼岸花は手を伸ばしながら、彼の名を叫ぶばかりだ。
「三日月!三日月!!」
手遅れなのだろうか。
間に合わなかった。
諦めてしまった。
「…………待ってるから!!帰ってこいよ!!大丈夫だから、待ってるから!!」
泣きながら叫ぶ。
叫んで、やがて彼岸花は泣き出した。
傷の痛みより、何より、痛いものがあった。
その痛いものがずっと、消えずに胸の奥で暴れている。
屋敷が大きな火を纏って燃え始めた。
彼岸花のいる場所にも、火は回ってきた。しかしもう、それすら構わないことのような気がしていた。

空には、月が出ている。

















目が、覚めた。
覚めたといっても、瞼を開けることはまだしていない。
ただ、回りの音がよく聞こえているので、ここが現実であることくらいは理解できた。
ーーー金属音がすぐそばでする。
これは、現実の音。
彼岸花は、今の自分の気持ちがよく、わからなかった。
いいや、わかってはいたけれど、言葉にしたくなかったのだ。
全ては夢の中の出来事であるはずなのに、胸の辺りが酷く痛かった。
ーーー……さん!!どうして、こんな真似
もしかしたら、三日月との事も、ただの夢だったのではないか。
…………だとすれば、希望のような絶望だ。
そうであっては欲しくない。けれども、あんな結末の夢が真実だと言うのなら………
ーーー……………。
ーーーつ…さん?何か、様子が………
(……………みっちゃん、の声か)
辺りが騒がしくなってきた。
感傷に浸る間もなく、彼岸花は目を開ける。
するとまず、直ぐ側にいた歌仙と目があった。
「…起きたのかい!?おはよう!!」
狼狽えながら、歌仙は叫んだ。
歌仙の反応で他の皆も彼岸花を振り返る。
………………?振り返る?
(なんだ、皆何を見ていた?)
「全く君は、厄介な時に………」
苦笑いを通り越した歌仙の表情。
彼岸花はそして現実に気がついた。
「……………………え?」
刀を合わせる燭台切と鶴丸国永。
鶴丸国永の片腕が、骨とかしている。

闇落ち。

彼岸花の感傷はまだまだ先のようだ。
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