第9章 月蝕の三日月。命のない罪。つまりは矛盾
壁に刺さった自身の本体。
上手いこと着地した彼岸花は、直ぐ様うしろへと下がり、その柄に足をかけて、宙へと跳んだ。
壁を蹴って飛び上がったのとは異なり、足場をもってしての跳躍である。その上がり具合は三日月の頭上を取るまでに至った。
正面より来ると思っていた攻撃。しかしそれが上に移ったことで、三日月の動きが遅れる。
それでも直ぐに切り換えて刀を向けてくる辺り、三日月はやはり絶対的な実力を持った刀と言えよう。
だが、それもーーー
「私には通用しないんだよ!!」
血が傷口より垂れ流されて、床に染みを作っていく。
眼下の三日月の目にも、血が落ちた。
それは、ただの偶然。天の助け。
「!」
一瞬、条件反射からの隙が出来て三日月の一閃が軌道を狂わせる。
空中で、三日月の攻撃は彼岸花に当たらなかった。
寧ろ、彼岸花の手は三日月の刀身を撫でるようにして交差した。
「喰らいやがれ!!」
彼岸花の声が辺りに響く。
三日月が目を開ける前に、彼岸花の膝が三日月の顔面を打った。
三日月が、刀を手から落とす。
……………かくして、三日月と彼岸花の戦い
に決着がついたのである。